graf laboで働く家具職人のふたり(前編)

こんにちは。オンラインショップ運営担当の信川です。
1ヶ月前から始まった読み物。ゆっくりペースの更新ではありますが、いろんなスタッフがいろんな切り口でgrafについて、商品について語っています。私自身更新を楽しみにしていて、スタッフの思いが溢れた愛のある文章を噛み締めています。

さて、今回はgrafの家具を作っている工房、graf laboで働くふたりの職人にインタビューをしてきました。仕事に対する思いからプライベートなことまで、grafの家具が作られる現場からたっぷりとお届けします。



左:荒木 優花  右:泉 佑里香

laboってどんなところ?どんな仕事をしてる?

 :laboはgrafの家具を作っている工房なんですけど、そんなに広くはなくて、でも一通り機械は揃っていて。
荒木:grafを知らない人から、そんなに少ない人数で働いてるの?と驚かれたこともあります。
信川:今laboは何人で働いていますか?
 :主には4人です。プラスでアルバイトの方だったり、以前grafで働いていたOBの方にヘルプで来てもらったりしているので、6~7人で働いています。この人数でgrafの家具全部を作るのは本当に大変です…!
あと、laboは夏はめちゃくちゃ暑くて冬はめちゃくちゃ寒いです。笑

信川:なるほど。環境も仕事量もなかなか大変そう…!具体的な仕事内容も聞かせてください。
 :材が届いて、それを削って幅を合わせて組み立てて、家具のイチのところから作り上げます。
荒木:全体像で言うと、shopで受注した内容がlaboに流れてくるんですが、laboみんなで流れ作業で作っているのではなく、基本的には一人のお客さまに対して一人が、材料の仕入れから製作、お客さまに届けるまでを担当する形で進めています。
信川:一人何案件くらい持ってるんですか?
 :先月荒木さんは一気に5~6件くらい持っていました!ソファ3件と椅子とその他にも。これは多い方で。ただ平均何件っていうのは言いづらいですね。
信川:一人のお客さまに対して一人で担当するって言ってましたが、二人で作業するみたいなこともありますか?
 :全然あります。先日発売したPlace Standは30台のロット生産だったんで、私と先輩と一緒に二人で担当を分けて作っていました。ちなみにPlace Stand 30台は40日以上かかりました…!

新作家具 Place Stand

ものづくりのここが楽しい!というポイントを教えてください。

 :私は材と材の接着面や加工面がピシッとはまったら嬉しい!楽しい!って思います。3/6 Sofaの脚のアールを見せるための加工があるんですけど、そこの隙間がはまると楽しい!その作業が好き!
荒木:私は最初平らだった木材が、最終的には立体になって座れるようになるとか、形になったときが楽しい。何を作るのが好き、とかは特にないんですけど、なんでも立体になったら割りとあがっちゃいますね。
信川:この家具を作るのが好きとかはないんだ?
荒木:なんだろ、テーブルとかよりは、加工が多い方がいいですね。なんか細々しているパーツを組み上げるのが楽しい!

私がお願いすると、さっと糸ノコで加工をしてくれた荒木さん。

今まで作った中の自信作と、反対に難しい、苦手かもと思ったことは?

 :私の自信作はTROPE HACKSのカワイハルナさんの「浮遊」です。長さを実寸で測って、斜めにカットした材をピッタリ合わせるんです。スポってはまってめっちゃ楽しかったですね。笑 あと見た目もかわいい。シンプルにものとして好きです。
荒木:私は自信作ってちょっと出てこないですね。難しい。毎回反省してるし、もうちょっとこうすれば良かったとか、先輩に教えてもらってわかって、次はもっとこうしようとか、それの繰り返し。これはうまくできた、全部自分の力でできたかっていうとまだまだって感じです。
信川:おぉ…職人って感じ。

カワイハルナ「浮遊」


信川:反対に難しい、苦手かもって思うことは?
 :私はさっき言った3/6 Sofaの脚を作るのは楽しいんですけど、最後に背のクッションを取り付けるのが本当に苦手。パッとできそうな感じがするんですけど、すごく難しい。3/6 Sofaの背から見ると何も金具がない状態なんですね。それはつまり金具が見えないところで固定されてるってことで。金具を絶妙な角度で計算して、ピッタリのところにつけないといけないんです。
角度が急すぎると背板がそもそも取り付けれないし、緩すぎると取れちゃう。その塩梅が難しくて苦手。超苦手。最長1日取り付けるのにかかった。それは怒られたけど。笑

荒木:私はなんだろ、3/6 Sofaの脚が難しい。
 :あ、逆に!笑 めっちゃ難しいよね。
荒木:難しいからこそ、さっき泉ちゃんが言ってたみたいに、ピッタリはまったときとかは楽しい。
信川:難しいからこそおもしろい。それはみんな共通なんですね。3/6 Sofaの話でもちきり。笑

泉ちゃんの苦手な作業、3/6 Sofaの背面クッション取り付け。

家具はどんな使い方をして欲しいですか?

 :grafの家具は高い。その高い家具にお金をかけてくれる人には、アートのように見て楽しむってことがあるけど、それもいいけど、大事に大胆に使ってほしい!日常使いで自由に。
せっかく使うために作ったのに、保管されてると…。使ってぜひ体験してほしい。
荒木:めっちゃわかる。
 :大胆に使うからこそ、経年変化していく。そこでメンテナンスして、また大胆に使って、大事に長く使ってほしい。雑にって意味ではなく。
荒木:Narrative18の小家具、例えばHaco・Wacuとかだと、箱を表にするか裏にするかとか、そういうのだけで使い方が変わると思うし、自分らしい使い方をしてほしいですね。固定概念なく。模様替えしてほしいな。
これはここに置くもの、じゃなくここにあったらどんな感じかな?とか実験してほしい。

Narrative18 Haco・Wacu

laboで働く良さ、grafで働く良さを教えてください。

 :laboで働くよさは、荒木さんもさっき言ってた、お客さまの一つの家具に対して一人が担当するスタイルがすごくいいなと思ってて。学生の時インターンで他の工房見学に行ったりしたけど、あなたは椅子の脚の丸棒を磨く人、あなたは接着する人、あなたは梱包だけする人と大体分業制なんです。laboでも2、3人で作業して分担することはあるけど、それでも担当する量は全然多い。家具作ってる感じがある。そこが楽しいですね。

荒木:私も泉ちゃんもお客さんに直接関われるっていうのに結構執念深いんです。笑 私がshopで働いていたときの話で、コロナ禍で、ECで注文をくれる方が多くなってきて、直接会えないけどどうやってお店に来てるみたいな、お客さまと接することができるかって話してたことがあって。手紙を書いたりラッピングに力を入れたりっていうのをやってたんですけど。それはコロナ禍のshopで起きたことだけど、ちょっとlaboの状況と似てるなって思っていて。顔が見えないお客さまに対して何ができるんだろうって考えながら働いています。

信川:なるほど。一人のお客さまに対して何ができるかっていうのを考えられることと、その方に対してイチから作るっていうのがいいところ?
 :受注生産だから、なんとなくお客さまの影がわかるから、それもいいところかもしれない。
荒木:shopからチラチラ教えてもらったりとか。この人ゲームやるからとか。スイッチ入れるからとか。笑 あぁスイッチやるんだぁって。笑

 :grafで働く良さは、この企画も他の会社だとないかもしれない。インタビューしてもらうのとかも。いろんな部署があるから知らないことを知れることが多くて楽しい。
荒木:学生のときに周りを見たら、自分はプロダクトデザインのコースだけど、ビジュアルデザインだったり、プログラミングをやってる人もいて、自分と違うことをやっている、という感覚に近いかも。
 :あー、確かに。全く出会ったことのない人たちといるってわけじゃないけど、ちょっと違う。そこが楽しい。

お客さまを想像しながらひとつずつ丁寧に製作。

laboで働こう、grafで働こうと思った経緯を教えてください。

 :私は専門学校で木工を学んでいて、そこでgrafのアルバイト・インターンを募集しているのを見て知りました。まずはインターンに行ってみて、そのあと3年アルバイトとして働きました。そこでgrafがどういうことをしているのか段々知るようになって、この4月から正社員になりました。

荒木:私は「ようこそ ようこそ」というgrafの本でgrafのことを知ったんです。たまたま知り合いに本を貸してもらって。その時は大学で木工をやってたときなんですけど、なんか自分がぼんやり思ってたことを言語化してくれたのが「ようこそ ようこそ」で。ものづくりのバックグラウンドの話が結構出てきてて、身の回りにあるものが誰がどんなふうにどこで作ってるのかを、わかってるのとわかってないのとで全然違うっていう話が出てきてて、それから身の周りにある普段使ってるものがどこで作られているのかなって考えるようになって。それがすごい心に残ってて。

「ようこそ ようこそ」 graf/著


信川:それでgrafを知って、いいなぁって思うようになって?
荒木:そうです。いろんな部署があるし、私自身が家具も作りたいけど、最初shopで接客もしてたし、絵を描くことも好きだし、他のいろんなことに興味があってっていうのもあって、楽しそう!って感じですね。
信川:荒木さんはgrafに入ってどれくらい?
荒木:3年目です。

信川:学生のときに木工をやってて、すぐにlabo!じゃないんですね。
荒木:ではなかったですね。ものづくりのバックグラウンドっていうのを考えるようになって、知ってると扱い方って変わるよねっていうのを考え始めてから、そういうのを知ってお客さんに使ってほしいなっていうのがあって、それで接客で、作り手と使い手の間に入りたいな、って思ったのが最初で。でも働いてみてから結局、ちゃんとものづくりの現場を知ってお客さまと関わりたいってなってlaboにって感じです。
なんか私の中で工場のイメージはお客さまと断絶されてるような感じがあって。でもshopにいるときに見たlaboはもっと表に出ているのを知って、あ、laboいいなってなりました。納品に行ったり、いろんなところにコンペとか出してるのを見て、いいなって思うようになりました。



前編はここまで。職人としてのこだわりを感じたり、仕事に対する熱い思いを聞けたり、なかなか濃いインタビューになりました。
後編はプライベートなことにも迫り、ふたりの人柄もご紹介できたらと思います。ぜひお楽しみに!

この記事の投稿者

grafのオンラインショップ運営担当です。1986年生まれ、A型。美味しいご飯と美味しいお酒が大好き。いつか猫と暮らすのが夢。