感覚の伝わるカトラリー SUNAO

こんにちは。
grafの企画・PRを担当している寺田です。

すっかり蒸し暑くなり季節も移ろいましたが、grafでは梅雨入り前にシェフインレジデンスのプログラム「穀雨」を開催しました。
料理家の高松遼平さんとアーティストの山﨑萌子さんがgraf porchに滞在し、高松さんの地元・富山で穫れた魚介と、大阪のなにわ伝統野菜などを使った1日だけの食事会。食事会の空間では、食材のリサーチに行った際に山﨑さんが撮影した写真などの展示も行いました。その時の瑞々しい景色はまた別の機会にしっかりと。

撮影|moeco yamazaki

旬の食材が盛られた美味しい食事に添えるシンプルなナイフやフォーク。名脇役的存在のカトラリーに今日は光を当てたいと思います。

grafでデザインを手掛け、世界的に有名な金属加工の町、新潟県燕三条にある燕振興工業さんが製作しているカトラリーシリーズ「SUNAO」。

発売から約20年が経ってもデザインに変化を加えず、長くおおらかに愛されている商品です。食卓に並べた時の美しさを考え、お箸と並んでも違和感がなく、日本人の手に合う小ぶりなサイズにもなっています。

カトラリーは全8種

慌ただしい日々のなかで、時間がゆっくりと流れている瞬間を感じることがあります。それがSUNAOを使って食事をしている時。
大げさなような気もしますが、使っていること自体を忘れるようなシンプルなデザインであるものの、柄を持つと程よい重さがあり目の前の食べ物をしっかりとすくっている感じがします。ほんの少しの重さが効いて、意識して食べるからそう感じるのかなぁと思います。

程よい重さから生まれる使いやすさの理由について、デザインを担当したgrafのプロダクトデザイナー松井に聞いてみました。

開発当時のデザインスケッチ

条件が導き出したぴったりの重さ

「冷たい印象にならない、ぽってりとした厚みと柔らかなエッジ」を目指したそうです。

(ここからは、よければカトラリーの写真を見ながらぜひ読んでみてください。)
指が触れる部分は持ちやすいように幅広く、丈夫さを担保するため厚みをもたせて重くする。一方、柄と口に入る間の部分はきゅっとシャープに削り、柄の両端はまぁるくかまぼこ状にして重さを軽減する。
料理をすくう部分と持ち手の全体バランスもぴたりと合うのは、こんな足し引きから生まれました。

「構造が意匠になる」とは、こういうプロダクトのことをいうのかなぁと改めて思いました。程良い重さと持ち心地、ちょうど均衡したバランスで保っているのがSUNAOの形状のようです。

柄の裏はかまぼこ型

言葉から浮かぶイメージ

SUNAOという商品名とほぼ同時に浮かんだ、コンセプトとも言える言葉がいくつかあると聞きました。
池に浮かぶ波紋、透明な光、まっすぐに伸びる苗など・・外からの作用を受け入れるしなやかな力強さを表す言葉たちでした。
自然現象のイメージのような佇まいは、使い手が関わることができる余白のあるデザインを表しているのだと思います。毎日使うことで、余白が埋まっていくシンプルなデザインです。まさに絶妙なさじ加減。 

街中で出会

そんなSUNAOと飲食店などでふと出会う時、とても嬉しい気持ちになります。
神戸で打ち合わせの後ふらっと入った美味しいお店で出くわしたり、いつか行ってみたい北海道の食堂でも使ってくれていると聞きました。行ってみたいな。

SUNAOを選んでくれているお店は、素朴なカトラリーが寄り添う、居心地が良くて美味しいお店ばかりな気がしています。せっかくなので数件ご紹介してみたいと思います。

MUYA
和歌山の白浜にある一棟丸ごとリノベーションしたビル。初めて着るのに昨日も着てた?みたいな纏い方で着ることを楽しませてくれるMUYAの服を販売していて、落ち着いて喫茶と宿泊ができる場所があります。
去年の秋に伺った際に、デザートをいただきました。新しいスペースもできたようなので、この夏こそ泊まりに行きたいです。

SAN
桜川の丸いビルにあるお店。お客さん同士の距離がちょうどよくて、空間全体で他のお客さんとうんうん美味しいよねぇって共感している、と私は思っています。
ランチの場合、ワインかスープか悩ましいけど、前回のそら豆スープが美味しくて今回もスープにしました。パンとご飯も同じく前と同じ選択に。季節ごとに変わるご飯はもちろん、秋山さんがつくる丸パンがもっちもちで本当に美味しいです…。

Su
graf studioと同じ道の並びにあり、grafが2016年まで入居していたビルに移転したナチュラルワインのショップ il soffione。1Fはワインショップ、2Fには直営のワインバーSuがオープンしました。仕事帰りに立ち寄れる心地良いお店ができて嬉しいです。
お店のクリエイティブディレクションを担当されたNOTA&designの加藤さんにご依頼いただいて、ベンチはgrafでデザイン、製作を行いました。

SUNAOを使ってくださっているお店情報、募集中です。

この記事の投稿者

国立民族学博物館での勤務を経てgrafへ。商品開発やデザイン案件、展覧会企画などものづくりにまつわるPR活動を行なっている。フィールドワーク的じっくり旅が好き。