インタビュー「3/6 Sofaから探る、grafの原点」

こんにちは。graf online shop運営担当の信川です。
最後の更新から少し日が経ってしまいました。2023年最初の読み物となります。
ゆっくりペースですが、2023年も商品のこと、お店のこと、わたしたちのことを綴っていこうと思いますので、どうぞお付き合いください。

さて、grafは今年で創立25周年となります。
先日、創立メンバーでもある代表の服部と、プロダクトデザイナーの松井にインタビューをしました。
テーマは、「3/6 Sofaから探る、grafの原点」。
聞き手は入社1年目のスタッフ、山田です。
当店を代表するアイテムである3/6 Sofaはどのようにして生まれたのか。当時のgrafは、また世の中はどんな風だったのか。25年経った今、あの頃を振り返り、3/6 Sofaをベースにして話をしてもらいました。

左:プロダクトデザイナー 松井
右:代表 服部

―― 3/6 Sofaが生まれたのは今から25年以上前のこと。当時の様子を振り返ってもらいました。

服部:3/6 Sofaは1番最初のソファーやね。だから25年になるな。なんならもうgrafができる前から作ってた。最初はうちの実家のガレージで試作して。みんな集まってスケッチ描いて。
ちなみにgrafの最初のメンバーが僕、松井くん、野澤くんで、社名の「デコラティブモードナンバースリー」のスリーのことやねんけど、お昼に他の仕事をやりながら活動してた。
それでできたのが最初のこいつ。

松井:俺もめっちゃ覚えてる。服部氏の部屋のベッドの上で、服部氏と二人で鉛筆と針持って、紐をピーンって張ってコンパス代わりに線を引いて扇作ったりして。あと、プリントゴッコでロゴを印刷してた。笑 オール手作りで。ハンズで耐熱紙とか買ってきたりして。

山田:それはゆくゆくは世に出したいなぁってなんとなくビジョンを持っていたんですか?

松井:いや、作って売る。ってただそれだけ。

服部:そうそう。そこで作ったやつが展覧会になったんよね。バイオーダーのかたち。発注するとかも考えてなかったから、照明作ったときとかは、自分たちでアルミ切り出してソケットをつけるための金物を作ったりとかもしてた。ようやってたなぁって。

山田:それはお仕事終わってから夜にやってたんですか?

服部:そう。夜仕事終わってから集まって。それでこのソファも同じように始まって。お金ないから丸のこしか機材持ってなくて。ひどかった。笑 3×6判の板材を使って丸のこでできるものって考えたところから始まった。と言っても素人みたいになんとなくできました!って話ではなくて。一応板の裏に丸のこぶち込んでビスで止めて、テーブルソーの代わりにした。

松井:卓上丸のこみたいなのを自作した。笑

服部:そう、その上でベニヤ切ってたよね。

山田:初号機って今のと違うんですか?

服部:若干違うかも。でもほぼほぼ変わってない。

松井:基本、原型はまんまそのまま。お金ないから材料買えなくて、積層合板っていうホームセンターでも手に入る安定してる材料やから、これいいやん。って。
昔学校で出た課題で、ボンドも釘も何も使わずに、板一枚から作れる椅子を作るっていうのがあって、それを覚えてて、そういうのいいんちゃうってなった。

服部:3×6判で一枚からデザイン、構成を組み立てているから、日本の暮しにフィットするんだよね。四畳半の空間にでも、八畳の居間や、十二畳の和室にでも必ずフィットするモジュールなんだよ。
3×6判から生まれて、プロポーションを追求して出来たのが、このシリーズなんだよ。

松井:合板については、今は北海道の会社にオーダーして作ってもろてて、共芯ってやつで、強度が圧倒的に高い。昔使ってたのは共芯じゃなくて、芯材がラワンのもので積層の厚みが均一ではないタイプのものを使ってた。
強度問題で、10年くらい経った時に後ろ脚が外れましたとか色々あって3、4回素材の見直しとかバランスの微調整(改良)をやってる感じ。脚のアールはコーヒーのジョージアの缶を使ってガイド引いてた。だからジョージアアールって言うねん。笑
ガレージにいろんな缶が置いてあって、ここのアールはこの缶って決まってた。

山田:ジョージアアール。笑 それ聞いたらめっちゃかっこよく感じてきました。

山田:当時から座面に使ってる生地も同じだったんですか?

服部:色は同じ。

松井:当時、服地を扱っているところで、スーツ用のウール素材の生地を見つけて買ってん。反物で、あるだけ頂戴!って。張ってみたらいいやん!ってなって。でもそれが長持ちするかどうかとか、そこまで頭回ってなかったし、ただこの風合いがめっちゃいい!ってなって。それがこのチャコールグレーの生地の始まり。

服部:そうそう。笑 それでこの風合いをキープしつつ耐久性を上げるにはどうしたらいいやろう。って考えて。

松井:それで今シンコーさんにオリジナルで生地を作ってもらってるってところに繋がってる。

山田:なるほど。

服部:しかも当時、安いの探してたから、その服地屋さんのおっちゃんに、これもいいけど、なんかデッドストックとかでいいのないですか?って無理やり出してもらったりとかして。笑 

松井:多分3/6 Sofa が生まれた理由って、かっこいいの作りたいっていうのと、お金がないとかそういう現実がうまく組み合わさったからこそ生まれたアイテムやと思う。普通にお金があって、材料が買えてたら、合板を使うこともないし、3×6判を使おうって企画自体にも行き着かなかったと思う。
って考えると、25年経った今、3×6判1枚から椅子を作るのええやんってチョイスしたことが、素晴らしいなって思う。今でも古びひんもんね。

山田:25歳くらいの時ですか?

服部:うん、25、6歳やねー。ほんまやね、25、6歳のアイディアとしてはなかなかいいね。笑

山田:逆に今現在だったら、3/6 Sofaは生まれてないですか?

服部:生まれてないかもねー。

―― grafは25年前、堀江の小さなお店からスタートしました。作って売る。その形が広がり始めた頃の話も聞きました。

松井:南堀江のお店は、雑居ビルの2階で18坪の小さなお店やって。そこでこのソファとか並べてた。年配のお客さんはこれを見て「なんか懐かしいね」って言ってくれて、若い子が来たら「かっこいい」って言ってくれた。
なんかトラディショナルな雰囲気がありながら、材料とか作りがカジュアルやから、「新しい」っていうのもあって、両方合わさってるんやなって思って。

イギリスの「ウォールペーパー」っていう雑誌に載ったのも大きくて、それで色んな人が来てくれるようになった。業界の人とかも。
その当時、イームズとかミッドセンチュリーが流行ってて、積層合板を曲げてできる家具もたくさんあったし、そういう意味でも3/6 Sofaは違和感もなく、チープな素材っていうイメージもなかった。

服部:家具業界の人たちが見て、この発想は絶対家具屋から生まれへん。って褒めてもらえて。それで相合家具さんがうちと付き合い始めてくれた。
それまでは B to Bの概念も僕らにはなかったし、目の前のお客さんのために作るだけしかなかったからさ。やるやる!相合家具さんのデザインやるよ!って始まった。

―― 駆け出し時代、grafとしてのこれからの活動に可能性を感じたエピソードも聞きました。

山田:3/6 Sofa以外でも、思い入れのある商品はありますか?

松井:マッシュルームチェアとかやっぱり思い入れあるかな。仕事がパラパラ入り始めた頃で、店舗設計とか家具の依頼とかを受けてたんやけど。
アメリカ村を作ったって言われてる日限さんっていう方がいらっしゃるんやけど、その方がカフェを始めるっていうて、VIPルーム用のカウンターの椅子作ってって、依頼があって。「あんたら若いのに頑張ってんなー」言うてお店来てくれてん。
昼間普通にみんな働いてて、仕事が終わったら南堀江に夜集合して作業して、当時徹夜ばっかりで、しんどくなるから寝ちゃうよね。で、朝、散らばってるスケッチから服部氏がチョイスしたのがマッシュルームチェアで、それを日限さんのところに納品してん。

服部:いやそうやね、そのドラマっぽいのがさ。割と普通に起こってた。

松井:あとすごいなと思ってたのは、あれ、自分たちで全部できるやんって感覚凄いあった。頭にイメージしてることがものになるし、このメンツまじで凄いて思ってた。多分6人集まらんとできんかったことやと思う。

服部:臭い飯食ってたよねって感じ。共同生活もしてたし。

松井:しんどいけど嫌やって感じはないよね。むちゃくちゃしんどいねんけど、もうええわとかは一切ない。やりたくないとかいうのは一切ない。
よく言われてたのがちゃんと食べてる?とか。髪の毛も服もバイクもボロボロやし、全部ボロボロやねんけど本人らはなんも思ってない。笑

南堀江のお店借りる前にカフェブーム来てたから、カフェ借りてイベントしようって、2日間。で、やってみたら2、300人集まった。その時に映像とか音楽もあって、それは豊嶋氏が作った。んで荒西氏ってのが俺がジュエリーやってたから、それを入れるショーケースを作ってくれて。で、グラフィック全般やってフライヤーとか作ってみんなで撒きに行って、みんなであれ、すごいやんって思って、可能性感じるやん。自分らで作れるもん作って全部見せたみたいな感触があった。
それで半年後くらいに南堀江にお店をオープンした。



山田:3/6 Sofaはgrafの中の位置付けとして、一言で言うとしたら何ですか?

服部:原点やな。

松井:原点、うん。ルーツやな。多分、25年経っても飽きひんってすごいと思うねん。客観視してもそう思う。

山田:3/6 Sofaができた時って、他にボツになったものとかありながらできたんですか?

松井:いや、形にする前、絵の段階で3/6 Sofaをチョイスしてたかも。いっぱい絵を描いた中で3/6 Sofaをチョイスして形にして、そこから失敗なくやってるかも。そこから3×6判を使って何ができるだろうっていうベースから、シリーズ展開していった。

インタビューはここまで。grafとして活動を始めた当時の、若い二人の泥臭く目の前のことをがむしゃらに追いかけていた、まさに駆け出しの頃の話が聞け、背筋が伸びる思いでした。
いろんな思いが詰まった3/6 Sofaについて、インタビューでは以上となりますが、3月4日(土)14時より、トークショーも開催いたします。
いかにして3/6 Sofaが生まれ、grafが歩んできたのか。25年を振り返りながら、これからの未来のお話しもできたらと思います。お近くの方はぜひ足を運んでいただけると嬉しく思います。

【トークイベント開催概要】
日程|2023年3月4日(土)
時間|13:45受付 14:00-15:30
場所|大阪府大阪市北区中之島4丁目1-9 graf porch(graf Studio 2F)
登壇|服部滋樹、松井 貴
定員|20名程度  ※ご予約不要。ご来場状況により人数を制限する場合がございます。

また、3/6 Sofaは、現在世の中の情勢の関係で材料が手に入りづらくなっており、しばらく販売を停止しておりました。しかし、少量ですが材料を確保することができましたので、今回3月3日(金)から、「graf Coordination Week」というイベント期間中に、オンラインショップでも数量限定で受注を再開いたします。
完売後は、次回販売について時期や価格について未定となっております。ぜひこの機会にご利用ください。

この記事の投稿者

grafのオンラインショップ運営担当です。1986年生まれ、A型。美味しいご飯と美味しいお酒が大好き。いつか猫と暮らすのが夢。